- 日本臨床倫理学会第12回年次大会 大会長
髙野 誠一郎(福井赤十字病院 副院長 神経内科部長)
- 私は、高野誠一郎と申します。日本臨床倫理学会の第12回年次大会の会長を仰せつかりました。第12回年次大会は、2025年3月15日(土)と16日(日)の2日間の会期で開催させていただきます。場所は、昨年度同様、順天堂大学本郷・お茶の水キャンパスです。
私は、福井赤十字病院の脳神経内科の医師です。脳卒中の患者さんの終末期の医療について疑問を持ち、臨床倫理を学びはじめました。かれこれ20年前ぐらいになります。日本臨床倫理学会では、上級臨床倫理認定士に認定されています。私は臨床倫理認定士、上級臨床倫理認定士の立場としての、年次大会長になります。
日本臨床倫理学会では、2017年度より、各医療施設において倫理的助言ができる人材を養成すべく臨床倫理認定士制度を創設しました。昨年度までに、全国で1,253人を臨床倫理認定士として認定しています。また2020年度からは、さらに発展的に上級臨床倫理認定士コースも創設しました。昨年度までに上級臨床倫理認定士は225人名が認定されています。
年次大会の抄録集を読んでおりますと、全国で多くの病院が倫理コンサルテーションを行うこができるようになっています。今後は、倫理コンサルテーションの質、水準が問題とされていくとの指摘も多数ありました。
私のいる福井赤十字病院は、年間の退院患者さんは11,000人ぐらいです。倫理コンサルテーションで相談を受けているのは年間20~30件程度に過ぎません。潜在的に、かなりな数の倫理的葛藤がみられる事例が埋もれていることが予測されます。
倫理コンサルテーションを行っている医療機関は広がったとはいえ、全国に病院は8,100あまり、比較的規模の大きい臨床研修指定病院の数は、1,000弱あります。特別養護老人ホームなどの介護保険施設は全国13,000あまりあります。臨床倫理認定士1,253人では不足です。臨床倫理を語らう同士を増やすことが喫緊の課題です。同士を増やすためには、毎年の臨床倫理認定士養成研修のみでは、残念ながら数的に不十分です。学会は、特に上級倫理認定士に地域における倫理的対話の仕組みやルール作りの中核的な役割を果たすことを求めています。いろいろな地域で、上級倫理認定士の皆様は地域での倫理的対話の仕組み作りを始められたと思います。
令和6年度診療報酬改定で、入院基本料等の見直しがありました。「人生の最終段階における適切な意思決定支援を推進する観点から、厚生労働省『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』等の内容を踏まえ、意思決定支援に関する指針を作成することを要件とする。」と記載されています。ACPの取り組みの推進が推奨されています。今後は、行われるACPの質も問題となってくると思われます。
私たちには、所属医療・ケア機関からの要請のほか、地域からの要請、社会からの要請があります。私たち、臨床倫理認定士、上級臨床倫理認定士のさらなるレベルアップが必要です。
第12回年次大会では、皆様のさらなる学習、レベルアップにつながるようなプログラムを用意いたします。皆様のご出席をお待ちしています。